【背景及び目的】
●近年、ランプ照射による光トリートメントが注目を浴びている。
●長波長(600 ~ 675 nm)の光が、ヒトの肌の主構成タンパク質でありハリや潤いに重要である、コラーゲンタンパク質の発現に影響を与えるか解析する。
● 今回、生体での個体差などの影響を排除するため、ヒト由来の培養細胞を用いて解析する。
実験プロセス
●細胞 ヒト初代線維芽細胞(フェノールレッド不含有培地を使用)
●解析項目 ヒト 1型コラーゲン 及び ヒト 3型コラーゲンのmRNA発現量
細胞培養室外観およびランプセットアップ図
【方法】
675 nm, 633 nm, 600 nm の3波長 (株式会社キュービックアイディ社製)
XXX lux, XXX lux, XXX lux の3照度(カイセ株式会社製デジタル照度計で確認)
30 分, 90 分 の2照射時間
上記3波長×3照度×2照射時間
【研究結果】
グラフ1
Collagen1, Collagen3のmRNA発現量 n = 6, * P < 0.05 ( vs Con )
グラフ1(左)において、まずcollagen 1 のmRNA発現量は633 nmと光を照射していないConと比較して統計的に有意な差がでた。また、グラフ1(右)のcollagen 3のmRNA発現量は光を照射していないConと比較して全ての波長で統計的に有意な差がでた。
以上のデータから、XXX Luxの照度でヒト線維芽細胞を150分照射すると、コラーゲンのmRNA発現量が増加し、特に633 nmで顕著であると言える。
グラフ2
XXX Lux
コラーゲンランプ照射によるCollagen1, Collagen3のmRNA発現量変化
※左から
黄色→600 nm, ピンク→633 nm, 赤→675 nm, 青色→暗闇(コントロール)
n = 5, * P < 0.05 ( vs Con )
グラフ3
XXX Luxの照度での白色光照射によるCollagen1, Collagen3のmRNA発現量変化
n = 5, * P < 0.05 ( vs Con )
グラフ2のXXX Luxにおいて、collagen 1 では600nmが、collagen 3ではすべての波長でConに対してmRNAの発現量が統計的に有意に低い値であった。
次に、XXX Luxにおいて、collagen 1 では600nmと633 nmが、collagen 3では633 nmがConに対してmRNAの発現量が統計的に有意に高い値であった。
また、XXXLuxにおいて、collagen 1 では675nmのmRNAの発現量がConに対して統計的に有意に高い値であった。
グラフ3では、白色光と暗闇の比較で統計的に有意な差はなかったが、白色光を照射した方がmRNAの発現量が高くなるということはないようである。
以上の結果をまとめると
●XXX Luxの低照度では効果がない、もしくは逆効果である可能性が高い。
●XXX Luxでは633 nmと600 nmが効果的で、633 nmが顕著である。
●XXX Luxでは675 nmのみが効果がある。
●白色光は効果がないか逆効果である可能性がある。
これらの結果から推察するとXXX Lux以下では60分間の照射では効果が出ないと考えられる。XXX Luxでは633が効果的であるが、XXX Luxの高照度では675 nmのみが効果を示し、照度が強くなれば単純に効果も高まるわけではないと推察される。白色光は全く効果がないと考えられる。
1.collagen1 collagen3の違いとは
Collagen1
線維性コラーゲン。脊椎動物では最も大量に存在するコラーゲン。骨に大量に含まれ、骨に弾力性を持たせるのに働いている。皮膚の真皮にも非常に多く、皮膚の強さを生み出す働きがある。I型コラーゲンは、α1鎖(I型) 2本とα2鎖(I型)1本が集まって形成される。多くの組織でコラーゲン細線維、さらにはそれが集まったコラーゲン線維の主成分である。
Collagen2
線維性コラーゲン。硝子軟骨のコラーゲン線維の主成分。眼球の硝子体液の成分でもある。II型コラーゲンは、3本のα1(II型)鎖から構成されるホモトライマーである。
Collagen3
線維性コラーゲン。I型コラーゲンの存在する組織にはIII型コラーゲンも共存する場合が多い。真皮や大動脈に多い。III型コラーゲンは、コラーゲン線維とは別の、細網線維(さいもうせんい)と呼ばれる細い網目状の構造を形成し、細胞などの足場を作っている。創傷治癒過程の初期段階で増殖し、やがてI型コラーゲンに置き換わる事で治癒が進むといわれる。
2.mRNA qPCRとは
mRNAはDNAからタンパク質を作るために生産される設計図、指令書のようなものである。このmRNAが多いほど多くの設計図、指令書があるという事がいえる。つまり多くのタンパク質が作られようとしていることになる。
qPCRはmRNAの量を測定する手法であり、正確なmRNA量を測定するのに用いられる。
qPCRという手法でmRNAという設計図、指令書の量を測定した。
collagen1やcollagen3のmRNA量が多いほど、これらのタンパク質が多く作られようとしていると推測できる。